西願寺(さいがんじ)は、埼玉県草加市にある浄土宗の寺院です。

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浄土宗 西願寺(さいがんじ)

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埼玉県草加市遊馬町(あすまちょう)430 

浄土宗 西願寺

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まごころを供える  8月

―Offer up your true heart.―

 空に海に 煌めき光る たいようと共に遊んだ 遠い夏の日
 幼い日。夏の思い出。そう聞いて懐かしく思い出す光景が、誰にでもあるだろう。山や川を思い浮かべる方も多かろうが、私の場合はやはり空と海である。私の故郷、福島県いわき市は東北地方で最も晴天が多いと言われる地域。なかでも、私が生まれたいわき市小名浜は太平洋に臨む港町である。母校の校歌の歌いだしも「高台に 陽はふりそそぎ みはるかす 紺碧の海」と、高らかに空と海とを歌い上げている。ここまで条件が揃えば、私が少年時代の夏休みをどのように過ごしたか、なんとなく想像して頂けるのではなかろうか。水平線の向こうまで広がる真っ青な空のもと、港では釣り、浜では海水浴、磯ではカニやヤドカリを捕まえる。真っ先に頭に浮かぶのは、やはりそんな記憶の数々である。夏の思い出は輝きに満ちている。今も夢のように映る景色の中で、空の太陽も、海の大洋も、キラキラと眩しい光を放つ。30歳を目前にして、細やかな記憶は早くも曖昧になりつつあるが、二つの〝たいよう〟の輝きに包まれて遊んだ日々、それが私の大切な夏の思い出である。
 今になって思えば、そんな恵まれた日々を過ごすことが出来たのは、家族のおかげに他ならない。特に父は、おとなしい私を他の兄弟と共に外に連れ出してくれた。「今日は海に行こうか」。私たちの海行きは父の思いつきで決まるのが常である。それ故にトラブルも多いが、父は「大丈夫、大丈夫」と大抵のことは笑って受け流してしまう。そうかと思えば、海で採った生き物を飼うため、ポンプに水槽に人工海水にと、抜かりなく準備を調えていたりして。好きなことには妙にこだわる一面もある。上機嫌になると、父はすぐに親父ギャグを飛ばしてくる。移動の車中から鉄塔でも見えてこようものなら、「鉄塔が立ってっとう」そんなことを言っては、私達を笑わせようとするのであった。父は、いつでも楽しそうだった。太洋という名前の通り、空の太陽のように明るく、海の大洋のようにおおらかな人だった。私が生涯大切にしたい夏の思い出。そこになくてはならない、三つ目の〝たいよう〟。それは、今は亡き父、太洋上人である。
 8月に往生した父の七回忌が、もうまもなくやってくる。拙作ではあるが父、太洋上人に冒頭の歌を捧ぐ。生前にあまり見せることが出来なかった、お念仏をとなえる私の姿、今年も極楽浄土の父にしっかりと見せてあげたい。

 
(福島県いわき市 心光寺 宗川裕真)

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