西願寺(さいがんじ)は、埼玉県草加市にある浄土宗の寺院です。

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浄土宗 西願寺(さいがんじ)

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埼玉県草加市遊馬町(あすまちょう)430 

浄土宗 西願寺

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葉のささやきに 風を知る 5月

―Small things―like rustling leaves―
indicate how big winds blow.―

 個性豊かな鯉のぼりたちがゆったりと空を泳ぐ、穏やかな5月です。せっかくなら時間も忘れて、この心地よい季節を感じたいところでしょうが、近ごろの私たちときたら、四季の便りには目もくれず、下を向いて携帯電話の操作に忙しい毎日です。

 「忙しい」という漢字は立心偏に亡くなると書きます。立心偏とは心を表しています。即ち、心が亡くなる。落ち着きがないということなのです。正に今の私たちの姿そのものではないでしょうか。
 私が大学を卒業して間もないころ、初めて法要を勤めさせていただいた時のことです。私は、いよいよ法要が始まるというのに、間違えたらどうしよう、自分に出来るのだろうか、という不安感に襲われ、冷静さを失っていました。
 住職に「どうしたらいいでしょうか」と尋ねてみましたところ、返ってきた答えは、「一生懸命やればいい」。ただそれだけでした。私は、あまりにも簡単な返事で呆気にとられましたが、その一言を真摯に受け止め、ただただ信じて法要に励むことにしました。
 不安でも住職の教示に従い、一生懸命に勤めていく法要中、ふと顔を見上げると、御本尊の阿弥陀さまが私を優しく見つめているではありませんか。それはまるで、自坊に帰ってきた私を歓迎してくださっているように思えました。
 法要で阿弥陀さまに見守られながら過ごさせていただいた尊い時間、勤めていくうちに不安な気持ちもなくなり、無事やり遂げることができ、法要後は、しっかりとした安心感に包まれました。
 「南無阿弥陀仏」のお念仏も同じように、おとなえすることで不安から安心へと変わっていくのです。
 法然上人の御作で阿弥陀さまの慈悲の心を月の光に喩えられた「月かげ」という歌がございます。
 月かげの いたらぬさとは なけれども ながむる人の 心にぞすむ
 阿弥陀さまの光明は、全ての人々を分け隔てなく照らしてくださいます。私たちは、その光明に気付き、阿弥陀さまの本願を信じて、往生極楽を願い、「南無阿弥陀仏」とおとなえすることが大事なのです。そして、一声一声「南無阿弥陀仏」とおとなえする人となった時、お念仏の功徳が積もり、阿弥陀さまの光明に包まれ、心安らかな日々を送らせていただき、本願に乗じて、間違いなく往生極楽できるのです。
 新緑の間を吹き抜ける初夏の風に包まれる5月。下ばかり見てないで、前を向いて全身で爽快な薫風を味わってみてはいかがですか。
 
(熊本県山鹿市 長源寺 藤森法明)

 

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